前日の雪により登山口からの雪というこの時期にしてはまれにみるコンディションであった。
初日、二日目と天気に恵まれたが、トレースもあまり期待できない中、個人的な体調不良により伊藤は稜線までたどり着くことができなかった。
三日目に至っては上部は風雪、下部は風雨というめまぐるしい天候であり下降には緊張を強いられた。
【登山期間】;2013年4月28〜30日
【山 域】;北アルプス/南岳西尾根
【参加メンバー】;稲葉、伊藤、吉田、東家
【日程・行動概要】
27日;新座(21:00)→新穂高温泉駐車場(1:30)
28日;新穂高温泉(7:40)→ロープウェイ駅(8:20)→穂高平小屋(9:30)→白出沢分岐(10:40)→1本(11:50)→一本(13:15)→1915m付近CS(14:20)
29日;CS(6:10)→2130m付近(7:05)→2510m付近CS(10:40)…南岳西尾根…CS着(16:00)
30日;CS(5:20)→滝谷避難小屋(7:50)→穂高平小屋(10:10)→新穂高温泉駐車場(11:20)⇒各自帰宅
伊藤記
沢渡まで快調に走ることができたが、平湯を過ぎた頃から雪が交じってきた。前を走っている車は明らかにノーマルタイヤでスピードが落ちてきた。
この時期にまともな雪が降っていること自体あまり経験がない。
駐車場についてもGW前半ということもあるのか、登山客自体が少ないのか駐車場は一日遅れで入ったにもかかわらず余裕があった。
久しぶりにテントを張ってビールを空ける。夜半頃駐車場を巡回しているパトロールに助言を受け、テントの配置を移動させて再び仮眠。
4月28日(日) 曇りのち晴れ
朝起きると前日の雪は止んでいて、回復傾向にあるようだ。昼食を済ませてのんびりと準備をする。今日のテント場は行ければ稜線上、行けなければ取り付きまでというどのみちのんびりいっても着く距離だ。
駐車場で他のメンバーとの荷物に明らかに差を感じながら(食べるものと飲むものに差があるのだが)、ゆっくりとロープウェイ駅まで。入山届けをCLが書いている間にぼーっとしているとスノーバーを置き忘れていることに気づく。出だしから幸先が悪い。
登山口に向かうと雪が結構着いている。稲葉さんが聞いた山頂では積雪1mというのもあながち嘘でもなさそうだ。だらだらと林道を歩いていくと程なく穂高平小屋。雪がすごい。正月の山行のようだ。
次の目印の白出沢も大体1時間ほどと、八ヶ岳の美濃戸口や上高地から横尾へ向かう感じでいい目安だ。次の滝谷避難小屋までで一本とはいかず途中で休憩。滝谷避難小屋を通過して滝谷を見上げる。すごい高度感。
日差しも強烈になり、背中のハイドレーションも心細くなってきた頃、取り付き付近までたどり着く。上まで行こうという気にはさらさらなれず易きに流れ取り付きでテン場設営。
4月29日(月) 曇りのち晴れ
前日の宴会で飲み過ぎたのか朝から調子があがらない。前の週から風邪気味でのどの調子がと言い訳してみるが、初っぱなから足があまり進まない。トレースもなく場所によっては膝下ぐらいのラッセルになる部分もありGWの春山気分が吹っ飛ぶ。
登り自体は難しいところはないが、一カ所だけ急な登りがあり、新雪部分とザラメ雪というコンディションが悪い箇所がありそこは上からフィックスを垂らした。
そこを通過すると森林限界を抜け視界が開けてくるが、雪の状態が悪く細いところはちょっと気を遣う。
途中2510m付近で一本を取った箇所でテント設営を決定。伊藤の歩調が進まないのと翌日の悪天が想定されたため、稜線上での停滞はリスクが高いという判断となった。
設営後、伊藤以外のメンバーは稜線までを目指して行ったが、3時間程度で戻ってきた。マッチ箱もあまり難しくなかったようだ。結局ロープを出したところは下部の雪壁の部分だけだったようでスノーバーもテントの固定だけに利用されただけとなった。
山の中で体調が悪いのを直していくなどと行っていたものだったがとうとう体調が戻らないままメインの行程を終えてしまった。
<西尾根往復>吉田記
ラッセルは膝下から膝上程度。鋭いナイフリッジも出てくるため、最初に歩くのは緊張するシーンも出てくる。岩場のミックスしたところは、前爪の置き場所に気をつけていけば大丈夫。
厳冬期の名物「マッチ箱」は、南沢側を巻けてしまうため場合によっては気づかないで通り過ぎる可能性も。もし、巻けない状況であれば、強風や大型ザックを背負っての通過は、やはり相当緊張しそうだ。
南岳小屋の避難小屋は、入口の上部まで雪に埋もれていた。掘り起こすにはスコップでは歯が立たない氷のような状態であったため、残雪期の使用は要注意。
稜線上はかなりの強風であった。行程どおり進んでいたとしても、槍の肩でテントを張る、翌朝撤収するのは相当厳しかったであろう。(そういうのも一度は体験したいが。。。)
下山はバックステップで下るシーンも多く、心配していた岩場の下りも特に問題は感じなかった。結局、テン場から上ではロープの出番は無かった。
(南沢側を巻くことが2回あったためだろう。厳冬期とは相当異なる状況だったかと。)
正面が西尾根 |
滝谷出合 |
西尾根上部 |
稜線直下 |
マッチ箱 |
4月30日(火) 雪のち雨
夜半から風と雪が強弱を繰り返しながらテントを揺らし、起床の時間になっても風雪の勢いは変わらない。
食欲が戻らないため、スープのみとする。山人生初である。外に出ると50m先が見通せず、稜線を下るのは一苦労するなと覚悟して下山開始。新雪の下にザラメ雪が乗っていてアイゼンのかかりが悪く気を遣う。
下部でロープを出した箇所で懸垂。ダブルロープで1ピッチ。以降は傾斜もあまりなく時折バックステップを交えながら下降。バックステップをめんどくさがって普通に下山していたら軽く滑落。いかん、まじめに下山せねば。
取り付き付近に着く頃には雨に変わり、緊張感もだいぶ薄まりながらだらだらと下山。白出沢に向かう前の登り返しがよくわからず吉田さんのGPS発動で難を逃れる。いい時代になった。
雨を十分に吸った雪に足を取られながらも何とか下山。最後は穂高平小屋から林道をショートカットする道を利用したが、段差も少なく、途中崩落した箇所がなければ下りにはいいかもしれない。
アスファルトの道と濡れた靴でいい加減足にまめができてきた頃、駐車場に到着。二年連続で山頂に立てることができず、個人的には不完全燃焼で終わる。
<その他雑感>
・他の記録では大体二泊三日で行動を終わらせているようだが、二日目の稜線上の雪の状態にかなり左右されると感じた。
・帰りの風呂はそこかしこで日帰り温泉をやっているが、駐車場向かいの深山荘に入りたくなるのが人情だが、洗い場がある内風呂と露天風呂が離れている為
いったん体を洗って内湯に入ってから着替えて露店に入る、ということをしなければならない。値段も内湯に入ると700円、露天だけだと500円だが汗まみれに
なった体を洗って帰りたいので700円払うしかない。