今回は荷物も軽く、すべての行程を無理なくこなすことができた。ルート的には一応はバリエーションという扱いだが、ロープが必要となるところは部分的で技術的にそろっているメンバーであればロープも必要ない。
 ただし、川の水量によっては水線通しで歩くことができず、高巻いて歩く部分もあり沢登り技術は必須であった。
 天気にも恵まれ、カール底からカールへ突き上げるルートは爽快の一言に尽きる。

【登山期間】;2013年8月10〜12日
【山   域】;北アルプス/南岳・横尾本谷右俣
【参加メンバー】;稲葉、伊藤
【日程・行動概要】
 9日:新座(22:30)→沢渡駐車場(03:00)
10日:沢渡(7:00)→上高地(7:50)→横尾(11:00)→本谷橋(11:50)→C.S.(1950m付近)(13:50)
11日:C.S.(4:30)→カール底(6:40)→天狗原コル(8:50)→槍ヶ岳小屋(12:30)→ババ平(15:30)→横尾(18:00)
12日:横尾(6:40)→上高地(9:00)→沢渡駐車場(10:00)⇒各自帰宅

伊藤記
8月10日(土) 晴れ
 夏の沢渡の騒々しさからもう少し寝ていたかったが仕方なく起床して準備。今年から沢渡は第三駐車場からバスとタクシーが出るということで第三に向かうかちょっと悩むが、運良く相乗りできるパーティを見つけて上高地へ。
 観光にはまだ早く、登山客はもう少し早立ちしているしているせいか人がそれほど多くない。横尾までついペースが上がりがちになるところを押さえつつもいいペースで歩く。
 横尾橋を渡る頃には日差しはピークを迎え、遮るものもなく汗がしたたり落ちる。暑い。本谷橋で一息ついてようやく本日のメイン、横尾本谷の遡行の開始。
 出だしは踏み跡があるが、生い茂る草でいまいちはっきりせず右往左往する。川岸に降りたいが今年は水量が多いのか近いところは歩けない。
 結局ほとんど高巻きしたのだが、久しぶりの草登りでひやっとするがそれも部分的。一番嫌いなパターンだ。
 できるだけ川岸に向かって歩くように歩いていくと踏み後も出てきて歩きやすくなるが、水量が少なくなくなってくると河原を歩くことができる。
 さほど登っていないが、2〜3人テントを張るにはちょうどよく、正面には屏風岩をみることができるところで本日のテン場とした。寝不足だったし、初日だしといいわけをした
が、翌日足を伸ばしてもよいテン場がなかったので結果オーライだった。
 酒は日本酒を持ち上げなかった(!)が、焼酎の水割りと鍋で初日の疲れを癒した。

8月11日(日) 晴れ
 シュラフカバーとシーツの組み合わせでも寒さは感じなかったが、明け方近くは少し冷えた。雲もなく今日も晴天が期待できそうだ。
 朝食を済ませ、ヘッドランプで出発。出だしは河原を歩くことができたが、ちょっといやらしい高巻きが出てきて何とかやり過ごす。たまにフィックスロープが出てくるが、その方向に行くとさらに登ることになったりとあまり当てにならない。
 左俣への分岐で単独者が身支度をして出かける準備中であった。左俣へ向かっていったが、左俣は雪が結構残っているように見え、これから向かう右俣より急に見えた。
 途中、記録にもある大岩を越えるところには丁寧にもフィックスロープにいくつかの輪っかが作ってあってそこを足がかりにして登れということらしい。意地でも使わずにそこをクリア。
 大岩を超えると雪渓が残っており、ようやく軽アイゼンの出番。雪渓を超すと推量もいよいよ細くなってくるがカール底までは勢いのある沢が続く。
 空が近くなってきてカール底にあがると一面に広がるカールに思わず声が出る。ハイシーズンの北アルプスで同ルートを遡行しているのは我々のみという贅沢なシチュエー
ション。谷の底にも日差しが差し込むようになってくると、鮮やかな緑と明るい空がまぶしい。
 しっかりとした踏み後をたどり、大きな雪渓をつないでいくと天狗原のコルへの最後の登り。ザレとガレが混じった歩きにくい涸沢を登っていくと踏み後がまた見えてきてコルへと突き上げる。今日のハイライトはこれで終わり。槍ヶ岳、表銀座の常念岳、ぐるりと一望する。
 一般縦走路に出ると、結構な人だかりでガイド風のおじさんにストックの格納の仕方がなってないと注意を受けるなど俗世間に戻ってきたようでげんなりするが、終始天気もよく久々の3000mの稜線漫歩を楽しむ。
 槍ヶ岳小屋まで荷物も軽量のおかげですんなりとたどり着き、眺めの休憩を取ってから山頂に向かうかと話をしていたが、山頂まで登山者がつづら折りに連なっており、あれを上まで行くには何分かかるんだ?ということで登頂を断念。横尾でのビールを優先する。
 それにしても若い人が多く、またヘルメットをかぶっている人が多かったのが驚いた。山道具屋の陰謀だと思うのだが、帰宅後山雑誌を読んでいると「稜線上でのヘルメットは必須」と書いてあり時代は変わったのだなぁと感じた。シーズンでのオーバーユースによる人為落石が落石の原因なんではないのかなぁ。
 槍ヶ岳小屋から延々横尾までひたすら降りていくが、さすがに最後は疲れた。途中、3世代の家族で小さい子どもたちがしっかりとした足取りで登ってくるのには驚いた。どうやって子どもたちをその気にさせているのか是非伺ってみたい。
 18時過ぎに横尾について、早々にビールを買い込み一日の行程に乾杯した。

8月12日(日) 晴れ
 今日はゆっくりと起き出しても3時間弱の行程なのでのんびりと身支度。朝の涼しい時間帯の中、上高地へ到着。観光客でごった返している中、沢渡へ帰る相乗り客を捜すがバスに並んでないと誰がどこに行くのかわからず、結局バスにて帰る。帰りは第2駐車場でいったん止まってくれる。
 竜島温泉に立ち寄ろうとするも、「本日休業」の看板にあえなく撃沈。ファインビュー室山にて温泉と食事を済ませ夕方には埼玉に着。
 次回は是非左俣を歩いてみたい。

<その他雑感>
高巻きから下降するための補助ロープ等部分的にほしくなるところもあったが、基本的には必要ない。大人数の場合、テントを張れる場所が限られるか、張ることが難しい。カール底まであがらないと広さを確保できるような平坦な場所がとれないため、行程を考慮する必要がある。
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