予想に反して悪天候となり、強風の中での行動が続いた。厳しい条件ではあったが、予定通りの行程がこなせて良い経験となった冬合宿であった。
【登山期間】;2013年12月30日〜2014年1月1日
【山 域】;南アルプス/鋸岳〜甲斐駒ヶ岳
【参加メンバー】;天野、菅野、岡野、東家 計4名
【日程・行動概要】
29日;埼玉⇒戸台駐車場
30日;戸台〜角兵衛沢分岐〜角兵衛沢〜岩小屋
31日;岩小屋〜角兵衛沢コル〜鋸岳(第一高点)〜第二高点〜中ノ川乗越〜三ツ頭〜六合石室
元旦;六合石室〜甲斐駒ケ岳山頂〜仙水峠〜北沢峠〜戸台⇒各自帰宅
天野記
埼玉を菅野車にて夜発。岡野〜菅野〜天野〜東家の順でまわり、川越IC〜圏央道〜中央道経由で戸台へ。戸台駐車場は車がぎっしりで、すでに1台もとめられない状態になっていてびっくり。しかたなく車止めゲートの脇に寄せて駐車。先行していた稲葉パーティはなんとか県警の小屋の脇に駐車し、テントを張っていた。我々も河原の雪原にテントを張って、軽く一杯の後仮眠。
12月30日 晴れ
かなりの冷え込みでよく眠れず、震えながら起床。身支度を整えている間にも続々と車がやってくる。駐車場の中央にも車の列が出来ていくのを見ながら、県警の人が言うには「山ブームの影響で、どこの山域も駐車場が不足していて大変な状況」であるらしい。県警に計画書を提出。本日は我々の前に鋸岳へ2パーティ入山しているようだ。
先発した稲葉パーティに続き、我々も7:40に出発。淡々と河原歩きを続け、「鋸岳角兵衛沢」の道標が立っているところで川を渡り、角兵衛沢の登りに入る。沢といってもずっと樹林帯の登りが続き、昔登ったときもこんなだったかな?とおもわず首をひねるほどひたすら樹林帯の中を登っていく。いいかげんうんざりしたころ、ようやく正面に岩壁が見え始め、その基部が岩小屋になっていた。
時間的にコルまでいけない時間ではなかったが、先行パーティがいるのでコル付近の幕営スペースに不安を感じたのと、快適な幕場でゆっくり休もうということで、少し早いがテントを設営した(13:40)。
コースタイム(休憩時間を除く):戸台(1時間55分)角兵衛沢分岐(2時間35分)岩小屋
12月31日 晴れ
夜半からかなり風が強まったようで、テントの外はゴウゴウいっている。3時起床。ヘッドランプを点けて5:10スタート。真っ暗な沢の中をただひたすら登っていく。稜線上はだいぶガスっている様子で、登るにつれ風も強まっていく。
1時間以上登り続けたところで、コルからやや下の岩陰に幕営していた2人パーティがちょうど身支度を整え出発していくところに出会う。前橋の松田さんだったので、挨拶をして先行していくのを見送った。さらにコルの直下に2人パーティが幕営していたが、コル付近に4人用テントを張るスペースはかなり難しそうだ。昨日はスペース的にも天候的にも下の岩小屋に泊まって正解だった。
コルから第一高点への登りに入ると、なお一層強風にさらされながらの登高となる。明るくなるにつれ視界のほうは徐々に良くなっていくが、風に巻き上げられた雪が目に痛い。
第一高点を越え、小ギャップへ。コル直下幕営の2人パーティは鎖を使って下り、さっさと行ってしまったが、我々はもちろんロープを出しての懸垂(8mほど)。小ギャップを登り返したところから、ややスラブっぽいリッジを右へたどるが、ここでもロープをFIXし通過。少しクライムダウンしてトラバースしたところにポッカりと鹿窓が開いていた。夏はこの鹿窓をくぐって戸台川側へ下るようだが、冬は忠実に稜線をたどる。
その先は問題なく進み、第三高点からは大ギャップへの懸垂のためトレースをたどり左へ下っていく。少しクライムダウンしてから今度は右へトラバース気味に下るとしっかりした潅木があり、みんなこれで懸垂しているようだ。周囲には残置されているダブルのFIXロープも2箇所ほどあったが、自分達の50mロープ(折り返して使用のため25m)で懸垂する。しかし下降し始めてから、20mほどと聞いていた懸垂距離が違う様子であることに気がつく。どうやら下まで届いていないようなので、4人が待ててさらにしっかりした潅木のある場所を探すと、残念ながら頭上6〜7m上のダケカンバしかなさそうであった。苦労して登り返し、一旦みんなに降りてきてもらい、ロープを架け替え再度下降。しかし最後のところが垂壁でどうしても下が見えない。ロープを仮固定しておもいっきり身をのりだし、なんとかロープの先が雪面に触れているのを確認した。
どうやらコルよりだいぶ釜無川側へ寄っていたため下降距離が長くなったようだ。忠実にコルに下りればたぶん20mほどの懸垂ですむだろうが、今回我々の懸垂地点だと、1回目7〜8m+2回目25m、計30m以上なので最低40mロープダブルが必要である。周囲には残置シュリンゲなども多く、かなりの人が同じ場所で下降しているようではあるのだが・・・。また懸垂を2回に分けたことで、一人で悪戦苦闘してしまい、寒い中みんなを待たせてしまった。自分の手際の悪さを深く反省します。どうもすいませんでした。
大ギャップからは一旦戸台川側へ下降し、岩壁の基部から潅木帯へ登り返す。第二高点頂上には剣が立ててあり、第一高点から辿ってきたルートが一望できる。風は相変わらず強いが、天候は回復してきて日差しもでてきた。中ノ川乗越までは凹状の地形を下っていくが、ガレ場に雪が積もっているのでアイゼンが岩に引っかかり歩きにくい。
コルで風を避けて大休止の後、甲斐駒を目指して出発。風は強いが幸いにも温度がさほど低くないので、遠くに聳える甲斐駒を眺めながら粛々と登っていく。しかしこれが結構長い。三ツ頭を越えて、そろそろ着いてもいいはずなのに六合の石室がさっぱり見えない。見落として通り過ぎてしまったのかと不安になるほどだったが、墓石のような石碑が立っている広場から程なく斜面に埋ずまったような六合の石室に到着(15:40)。先行の2パーティは一気に甲斐駒越えに向かったようで、中は無人。我々の貸し切りとなった。快適な一夜に感謝しつつ、のびのびと休みぐっすり眠る。
コースタイム(休憩時間を除く):
岩小屋(1時間20分)角兵衛沢のコル(30分)第一高点(15分)小ギャップコル(2時間30分)大ギャップコル(40分)第二高点(20分)中ノ川乗越(1時間45分)三ツ頭(1時間)六合の石室
元旦 風雪
てっきり「今日はいい天気」と思っていたのだが、外は吹雪であった。南アルプスまで影響があるとは相当冬型が強いのか。5:15出発。降雪はさほどでもなく、昨日のトレースが所々残っているくらいだったが、何と言っても風が強い。冷え込みがあまり厳しくないのが救いだが、これだけ吹きつけられるとしんどい。なかなかペースもあがらず、ゆっくりと登っていく。
ようやく少し明るくなりかけた頃、岩峰を右にまわりこんだところでちょっとした岩場にでる。下から見上げるとスラブっぽい岩場に鎖が垂れている。少し悪そうだったので、ロープを出すことしにしてハーネスやガチャ類を準備していると、周囲が一気に明るくなってきた。すると薄暗い時に見ていたほど悪そうな状況ではなく、鎖が一本垂れていれば十分な岩場であることがわかってきた。しかしせっかく支度したのでロープを引いて直上し、突き当たりから左へトラバース。ルンゼの上に出たところでFIXして後続を迎える。ちょっといやらしい岩場ではあったが、まあロープを出すほどでもなかったか。
あとはただ登っていくだけだったが、どこまでいっても頂上に着かない。これかな?と思うたびに更にその先が出てきて、ほとほと嫌気がさした頃ようやく山頂の祠が現れた(8:55)。天候のせいもあったと思うが、これほど時間がかかるとは予想していなかった。午年の元旦に甲斐「駒ケ岳」の山頂に立ったわけであるから、今年はいい年になるかな?などという淡い期待を吹き飛ばすような風雪に、早々に山頂から退散する。なお我々の頂上到着の直後、黒戸尾根から登山者が2人あがってきた。互いに「こんな天気に、なんて物好きな」と思ったのは間違いない。
頂上からは一旦摩利支天方向へ下った後、右へトラバース気味に下りて駒津峰へ続く尾根に出る。六方石とおぼしきコルで休憩するが、風のあたらない場所がなかなか見つからず休憩もままならない。稲葉君達は昨日のうちに降りたのか?付近にトレースは見当たらない。駒津峰到着は10:30。駒津峰から仙水峠へ下り始めたあたりの斜面が、本日もっとも風が強かったとみんなが感じた。仙水峠までは吹きつけた強風も仙水小屋の上部で樹林帯に入ると、ようやく弱まった。
ここから先はひたすら歩くだけだが、この下山もなかなかに長い。北沢峠から八丁坂、丹渓山荘から戸台川沿いの林道に至る頃にはもはや夕暮れ。ヘッデンを灯す前、ぎりぎりというところで、戸台の駐車場に到着先に下山してすでに帰路についている、とばかり思っていたのに。これはどう判断すべきか・・・、と考え始めて5分もしないうちに3人の人影が。どうやら我々が駒津峰を後にした、そのすぐ後に駒津峰へ直接突き上げたらしい。はからずも全員揃って無事下山を確認でき、まずはよかった。長い一日でしたがお疲れ様でした。今年もよろしくお願いします。
東家記
現地には30日の1:00着。戸台の駐車場はほぼ満車。入り口付近には稲葉さんたちのパーティーのテントが張ってあり、まだ起きていた。
2時まで軽く飲んで出発は8時として就寝。標高1000mくらいだが、ここが一番寒かった・・・。
12月30日 快晴
早朝、出発の準備であたりがざわめきだす。北沢峠で小屋泊まりのか軽装の人もちらほら。身支度をして、出発!
最初は戸台側沿いをノンビリ歩く。年内で帰りたい人が多いのか朝から戻ってくる人も多い。1Pで堰堤にて休憩。2P目で角兵衛沢の出合に到着。
対岸に渡り、アイゼンを装着。先行がいるため、トレースはついている。天気は快晴。登りは結構急で、しんどい。角兵衛出合いから700mくらい。2000m付近の大岩下の岩小屋にベースを張る。時間は14時。ご飯も宴会時間もだいぶ早いので19時には就寝。
12月31日 晴れ
3時起床5時出発。出だしから2P分ひたすら登る。暗いのでどのくらい先があるのか全くわからない(泣)。尾根から岩と雪のミックスした沢沿いにでてさらに登る。コルの手前でハーネスを着け、出発。
第一高点までは問題なく、ひたすら登る。そこから、小ギャップを懸垂。残置ロープもあるけど・・・。そのあと、鹿窓に行く。岳人の記事で鹿窓後のトラバースばかり気になってたけど、冬は鹿窓はくぐらないらしい。しかも、記事に鹿窓手前の馬の背みたいな岩場でビレイと書かれている。岩穴をピッケルとか書かれてるけど、右手の足場は悪くなかったので、あまり気にならなかった。ただ、強風だったら別だけど・・・。ここでピッケルで引っ掛けて登るほうが怖い気が・・・。ポッカリ開いた鹿窓の横を通り過ぎて大ギャップ。25mでは全然足りず2Pに分けて懸垂下降。残置ロープがあるから、通る人もいるのだろうが、降りた20mルンゼ上方に下降点があり、こちらはルートの直下となっている。あとはアップダウンを繰り返し、16時六合目石室。本日はここで終了。
アップダウンを繰り返したため、体力的にも結構使ったし、甲斐駒の先は長い・・・。15時過ぎに終了。小屋は誰もいないため、テントを張って晩飯準備。かなり快適。スペースを十分に使って、大晦日を過ごす。あとは帰るだけなので割りと気が楽!晩ご飯を食べ、年越しそばの変わりににゅう麺食べて、昆布巻きも食べて就寝。明日も5時出と早めしたけど、最終的にこれが功を奏した・・・。
元旦 風雪
小屋の外で風が轟々となっている・・・。雪は降っていないものの、かなりの強風。本日もいきなり登りから。夏道では1時間半で頂上で標高差400mほど。かなり風が強く、なかなか進めない。岩陰に入ると物凄くほっとする。その後も、常に強風。途中の鎖場ではロープも出して、登る。強風の中ハーネスを着けるのがつらい。アイゼンつけたまま着けられるハーネスの購入を検討(また出費・・・)。鎖はあるものの、登りづらい。途中アイゼンがずるっとなって、ヒヤッとした。鎖もあったし、登山とあまり関係ない普段のトレーニングのおかげで、割かし冷静。ガツッと登る。このあとも登り、9時前に何とか到着。途中、なんども風に煽られ数回アイゼンから火花が・・・。どんどん歯が丸くなってく(泣)。
黒戸方面から2名ほど登ってきたが、仙水からは誰も登ってこない。記念撮影もして下山。途中六方石で休憩し、駒津峰へ。これがまた登る。結構ここが精神的に辛かった。駒津峰下降直後が今回の中で最も風が強く、凄まじい勢い。仙水から樹林帯上がって、この風に当たったら、頂上はもっと最悪と思って引き返したくなると思う。500mくらい一気に下るので、すごく足がしんどかった(泣)
峠にでても、風はそれなりな上雪も降ってるので樹林帯まで歩いて休憩。ここから北沢峠まで緩やかに下ってく。途中、北沢駒仙にはテントが多数あったけど、今日は停滞だったのかなぁ?元旦から足踏みっていうのはちょっとヤダ。北沢峠から、あと4時間。荷物が重く感じ始めてくる・・・。八丁坂手間でピッチを切る。こっからまた下り。今日から登ってくる人ととも結構すれ違う。道は丁寧にロープがあったりするが、足場が悪く、欲しいところに補助なかったりと下りは結構緊張。アイゼンつければいいだけの話だけど・・・。熊穴沢出合を通過し、10分くらいで角兵衛沢出合。もう、終わり気分になりつつ、堰堤休憩場所まで、すごく長かったし、そこから駐車場は果てしなく長く感じた。日が暮れかかってたせいもあるのだろうけど、出発が1時間遅かったら真っ暗のなか歩いてたのか・・・。駐車場に戻ると稲葉さんたちの車がまだある!何かあったのかと心配してたら5分後くらいに降りてきた。みんな無事に下山完了。
帰りは諏訪湖でご飯食べて解散。道も空いていたのでスムーズに帰れた。去年、槍ヶ岳は撤退だったけど、日の出時刻なってもうっすら明るくなるだけで
ひたすら風と格闘だったけど、今年は登頂できて良かった!
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