久しぶりのアルパインアイスができました。
当初は滑滝沢狙いでしたがクリスマス寒波での降雪で取り止め、戸台川に変更しました。
BC案も検討しましたが荷物を背負ってのアイスクライミングをと言う事で頂上を目指しましたが、二俣を間違え頂上に突き上げることは出来ませんでした。
戸台川自体は谷の途中途中に圧倒される巨瀑が点在し素晴らしいところでした。
次回も甲斐駒へ突き上げるアルパインアイスを計画したいですね。

【登山期間】;2013年12月29〜2014年1月1
【山   域】;南アルプス/戸台川本谷
【参加メンバー】;稲龍、吉田、加藤(深谷山岳会) 計3名
【日程・行動概要】
29日;西国分寺出発(20:00)→中央道経由→戸台P(23:30)
30日;戸台(7:30)→丹渓山荘(10:40)〜五丈ノ滝F1(13:00)・・・F2終了(14:00)〜駒津沢出合(15:00)
31日;CS(6:40)〜水場ノ沢出合(8:30)〜二俣(11:30)〜ゴルジュ連瀑一つ目(12:00)・・・連瀑二つ目終了(15:00)・・・連瀑二つ目滝上(15:30)
元旦;CS(7:00)〜駒津峰(11:30)〜北沢峠(13:30)〜丹渓山荘(15:00)〜戸台P(17:10)→伊那IC⇒西国分寺→各自帰宅

吉田記
 今回車を出していただいた深谷山岳会の加藤さんに西国分寺駅までピックアップに来ていただき、ほぼ予定時刻に出発。戸台駐車場に23時半に着いたところ、満車でびっくり。北沢峠からの往復だと登頂しやすいからか、すごい人気の山だと改めて実感。ほとんどの人は29日早朝には既に発っていたらしく、駐車場にテントは3張り程しかない。
 我々も何とか駐車スペースをつくり、その側にテントを設営。明日からの山行の安全を祈りつつお酒を楽しむ。その後、鋸岳パーティも到着し、ぎりぎりの駐車場所を確保した後、お互いに挨拶&明日の出発時間等言葉を交わす。しばらく各々のテントでお酒を楽しみつつ寝床に。
 今回の山行は、シュラフカバーなしの化繊シュラフ単体で寝ることにする。テント内での寝る位置をわざと端に取り、濡れやすく寒い条件でテスト。これまではダウンだったのだが、カバーをしたところで3日目にはふっくら感がなくなってくるのに不満があったため、今回は新しい化繊シュラフでカバーなしをテストしてみることに。

12月30日 快晴
 7時半、鋸岳パーティとほぼ同時刻に出発。指導所の方から、鋸岳を縦走するパーティが多いと聞くが、戸台川本谷は??
 丹渓山荘までは単調な歩きが続くが、一昨年の明石の冬合宿に比べたら雪もしっかりあり、距離も比較にならないため楽だ。
 丹渓山荘に時間どおり3時間で到着。外にテントを設営していたのは2パーティであった。そこで会った人曰く、2パーティが本谷に入っているとのこと。確かにトレースもあった。
 所々に氷瀑が現れ、丹渓山荘をベースに遊ぶのも楽しそうと思いながら進むこと2時間で五丈ノ滝に到着。途中、2パーティが引き返してくるのとすれ違う。そのうちの1パーティは、奥駒津沢出合の先にある3メートルほどの滝で諦めたとのこと。滝の下に釜がポッカリ口を開けており、支点が取れない形状なため、万が一ドボンするのが嫌なため下山してきたとのことであった。
 五丈ノ滝へ向かうルートも、確かに氷が薄く、水が流れている箇所も多く、踏み抜いてドボンが怖い。稲葉さんも、どこに足を置けばいいのか判断に迷う箇所では腹這いで進む(笑)。「あっ…」足を置いた氷が崩れ、私は2メートル滑り落ちた。すぐ先には釜がポッカリ(汗)。運良く止まり、何とか枝を掴んで這い上がることができたが、落ちていれば間違いなく戸台に帰ることになっていただろう…
 五丈ノ滝は、F1、F2ともにしっかり凍っており、稲葉さんが難なくリード。プレ合宿で今シーズン最初のアイスを練習できた私も、これぐらいならザックを背負ったままクリア。しかし、これで勘違いをしてしまい、翌日は散々な目に…
 F2を越えるとすぐに駒津沢との出合となり、時間も15時だったのでそこで整地し、テントを設営した。
 時間もあることだし、駒津沢のF1下部にあるバーチカルな10メートルほどの箇所が楽しめそうだったので、加藤さんリードでトップロープをつくってもらい楽しむ。モノポイントのほうが、人が上った跡を有効活用できるので良いなぁと改めて思った。最後は稲葉さんがアバラコフを作って懸垂で下降して終了。
 気持ち良く1日を締めくくれたため、お酒も進み、自分が持ってきたお酒を全て飲んでしまう。翌日は加藤さんにお裾分けしてもらうことに… ごめんなさい。
 この日も、昨日に続きシュラフカバーなしで寝る。昨日の濡れでシュラフの外側にはうっすらと氷が付いており、私が入ると融けて表面が濡れるが、あえて拭き取らず寝てみたが、睡眠には何ら影響はなかった。

五丈ノ滝F1

F1を超え、ちょっと登ると
F2が見える

F2は右端を登る

駒津沢出合

駒津沢F1で遊ぶ

12月31日 晴れ
 6時半出発。昨日すれ違ったパーティのものと思われるトレースを辿っていく。今日も左右の所々に氷瀑が現れ、戸台川本谷の良さを感じながら進んでいく。奥駒津沢の先の左岸(右手)に見える巨瀑も見事。
 30分ほど進むと、釜がポッカリと口を開けた滝に到着。直登は諦め、左岸を高巻きし、懸垂で降りることとする。ここからはトレースがなく、自分たちでルートをつくって行くことに。どこまで巻くか、どこを懸垂支点とすべきか等、稲葉さん・加藤さんの判断を勉強しつつ、適当なところで50メートルロープ1本で降りられるところで下降。
 雪がそれなりに積もっているため、これ以降は常にラッセル。標高は未だ2,000メートルに到達していないので先が思いやられる…
 谷は懸垂下降した箇所ですぐに左右に分かれている。さて、どちらに進むか… 広いのは右手だが、5メートル60度ほどの滝があり、どのトポ図にもそのような記載は見当たらない。
 我々は右手をトラバースし、流れの見える左手が本流と判断し進むことに。が、どうやら、右手が水場ノ沢出合の滑滝だった模様。私は、その滑滝が出合の手前にあるとは思っておらず、判断ミス。幸いなことに、稲葉さんが誤っていることに気づき、ちょっとした小尾根を越えて無事に8時半に水場ノ沢出合に到着することができた。
 今にして思えば、トラバースをする際、所々雪の下のガチガチに凍った足裏感覚があり、滑滝だったような気も… そして、たまたま角度のある箇所が滝のように露出していただけだったか… 地形図を見ると、出合の手前に左に延びる短い谷筋があり、そちらに行ってしまったようだ。
 その後、念のためロープを出すことにした滝をクリアし、進んで行くと右手から落ちる滝あり。ここが二俣で、この滝が右俣の入口のようだ。右俣に進むとすぐに連瀑の1つめが登場。稲葉さんリード。加藤さん、私の順に進み、連瀑1つめは難なくクリア。

奥駒津沢

左岸の断壁の巨瀑
(一番星?)

越えられない小滝
左岸を巻いた


水場ノ沢出合の小ナメ

ゴルジュに突入して行く
 いよいよ核心となる連瀑2つめへ!2つめは、氷の水道管が真ん中のラインより左側にでき、それが緑色に光りとてもキレイに思えた。さすがにリードは空身で行くこととし、ザックを引き上げ、フォローはザックを背負って上ることにした。もちろん、私もこのときは行けると思ったのだが…
 加藤さんリード。順調に進み、滝から姿が見えなくなる。ザックをもう1本のロープに結び、引き上げ開始。私たちは「大変そう」と思いながら、加藤さんのザックがどんどん上がって行くのをただ見ているだけ(笑)。後で聞いたところ、3分の1システムで引き上げはしたが、相当重かったとのこと。お疲れさまでした。
 続いて稲葉さん。水道管横の直登ルートを進む。稲葉さんが滝の最上部に到達し、先ほどザック揚げに使ったロープを私用に投げる。が、2回に分けてループ状に投げたロープのうち1周りが、直径1メートル弱のキノコ状の氷にすっぽりはまってしまう!
 ロープを解こうと振り回すが、全く解ける気配なし(泣)。仕方ないのでロープ末端を自分に結び、とりあえず上ってみようとする。しかし、キノコアイスにロープが凍りついてしまったのか、テンションが私にまでかからない… 大声で叫び、加藤さんのパワーのおかげでキノコを巻きながらなんとかテンションがかかったため登攀開始。
 しかし、キノコアイスは登攀ルートのかなり右手に存在し、上りやすそうなルートが採れない… とりあえずキノコのそばまで上がって行き、そこでアックスと1本とスクリューで支点を取り、身体を投げ出すように右手にあるキノコのさらに右側のロープを解こうともう1本のアックスで奮闘する。ロープを緩めてもらったため、自分でこしらえた不安が残る支点に体重をかけつつ、かなりアクロバティックな体制でキノコを破壊し、ロープを解こうと試みることさらに10分。運良くロープが外れたときは、これで先に進めると泣きそうなぐらいうれしかった。
 だが、これで一件落着ではなかった… キノコの上にある氷柱にロープがかかっているため、このキノコを乗り越えるルートでないと、上がれないことが発覚。ロープを緩めてもらっても、ロープ位置を変えることができず、何とかキノコを越えようとするがアックスの位置と、キノコへの足を置く位置がアンバランス過ぎて、私には無理… ならばこっちにアックスをと思って打ってみても、研ぎ方が悪いのか硬い氷が崩れるだけで、刺さらない…体力が無駄に消耗していく…。
 先ほどのうれし泣きしそうな感情とは真逆の悲壮感でロープに全体重をかけて乗り越えることを決意する。ロープにしっかりテンションがかかっているので、アックスは用いずにアイゼンの前歯だけを使いながらキノコをクリア。その後は普通に上ることができ、心底ホッとした。
 連瀑F2のすぐ上に、稲葉さんが既にテント設営用に整地を完了しており、ササッとテントを設営し、みんなで加藤さんの梅酒をもらって疲れを癒やした。
紅白歌合戦を聞きながら、というか、ほとんどその前のオヤジ的歌合戦という番組を聞きながらお酒と食事を楽しんだ。ようやく紅白が始まったが、20時過ぎには寝てしまった。
 表面が濡れたシュラフではあったが、中に入ってしまえば寒さを感じることは全くなく今日も寝ることができた。今回のシュラフは化繊の割には軽いため、軽量化のためにも引き続きカバーをせずにテストを続けてみようと思う。

連瀑二つ目


左岸の別れ道

前方に遠き道程

二俣のモコモコ滝

連瀑一つ目

連瀑二つ目

元旦 風雪
 7時出発。今日はなんとかビバークせずに、山頂・稜線に抜けそのまま家路に着きたいところ。が、すぐに膝ラッセルが始まり、この先の困難が容易に予想される。視界はそんなに悪くはないのが幸い。のっけから、巨岩に谷をふさがれて、巨岩左側の高さ1.5メートル程度の岩に氷が張り付いたベルグラの難所にぶち当たる。稲葉さんが試みるが、難しそう…。転進し、加藤さんが巨岩の右側を巻くべく道を切り拓く。
 その後はまたラッセルが続く。腰ラッセルとなり、全身を使い進む。疲れたときは鼻歌を歌うと気分がハイになり、もう一踏ん張りできることをこのとき知る。
 代わる代わるラッセルを続け、ゆっくりと高度を稼ぐが…。おかしい…。高度合わせをしてある時計を見ると、2,500メートルを超えており、本谷右俣と六方石
ルンゼの出合を優に越えている標高に達しているようだ。途中左手に見えるハズの2ピッチ80メートルの滝も確認できなかったし、今、我々はどこにいるんだろうか… 特段、二俣らしき箇所もなかった気がする…。今更ながらコンパスで進行方向を確認すると、、、南!。ということは、駒津峰に向かっているのか??
 地形図を見ると、2,350メートル付近の二俣を、顕著なルンゼとなっている右手に進んでしまったと個人的に推測した。本来進むべき左手の方を、視界が今ひとつの中で気づかなかったのだろう…
 でも、メンバー全員この天候で甲斐駒ヶ岳を目指すことは望んでおらず、私は正直、今回は十分過ぎるほど満足していたため、稜線に出てさっさと帰りたいと思ってしまっていた。そのためには、六方石だと駒津峰への上り返しがあるので、駒津峰にダイレクトに行ってしまったほうが精神的には良さそうだ、などと打算までする始末。
 延々とみんなでラッセルを繰り返していると、稜線に近そうな雰囲気が出てきた。尾根に上がってしまうか、このままラッセルしながらルンゼを詰めるか…
 せっかくだからルンゼを詰めようとの判断が下り、直進していく。すると、ルンゼの中に草付きが目立つようになり、だいぶ進みやすくもなってきた。所々氷結している箇所もあったが、慎重に前爪とアックスを使いつつ進むと、ついに稜線に出た! 時刻は11時半。
 駒津峰の甲斐駒ヶ岳側20メートルほどの所に出た。名前が付いているのかはよくわからないが、駒津峰に向かっている沢を詰めたことになる。稜線は強風のため、足早に樹林帯まで下り、ようやくそこで握手を交わす。

快適だった連瀑二つ目
滝上のCS

たぶんここら辺で右に・・・

ラッセル三昧!

沢が広がり
岳樺が出で来る

風雪の稜線

 アイス有り、ルートファインディング有り、ラッセル有りで、大変充実した山行に、その後も鼻歌交じりで下りていく。と、言いたいところだが、仙水峠から仙水小屋までは、正面に風を受け、顔が痛い中での辛い下山となった。
 北沢峠からは、スイスイと下っていき、さすがに最後の河原歩きの頃には疲れは出てきたが、ヘッデンを付ける前、17時過ぎに戸台駐車場に到着。ちょうど鋸岳パーティも先ほど到着したばかりのようで、みんなで急ぎ帰り支度をする。
 諏訪湖S.A.でみんなで食事をし、各々の車で埼玉に向かう。我々は加藤さん車で、西国分寺駅に寄っていただき、無事家に着くことができた。ありがとうございました!

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