春合宿のプレ山行として実施。
1日目、メンバーの不調等でやや出遅れたが2日目早朝発で予定通りの行程を消化。
天候は初日の夕方から雪。2日目は当 初晴れていたものの午後から風雪。
白馬頂上直下では他パーティの滑落事故に遭遇し、あらためて確実な技術の大切さを再認識した。
【登山期間】;2007年4月7〜8日
【山 域】;北アルプス/白馬岳主稜/積雪期バリエーション
【参加メンバー】;天野、菅野、黄、小茂田 計4名
【日程・行動概要】
7日;二股〜猿倉〜白馬尻〜八峰直下CS
コースタイム:二股(1時間30分)猿倉(1時間)白馬尻(2時間30分)八峰直下
8日;八峰直下CS〜白馬頂上〜大雪渓〜白馬尻〜猿倉〜二股
コースタイム:八峰直下(4時間)頂上雪壁直下(2時間)頂上(25分)頂上
宿舎(1時間50分)猿倉(1時間)二股
天野記
4月7日(土) 晴れ後曇り後雪
前夜発で車移動(22:00東川口発、2:00頃二股着)の後、仮眠。朝6:00起床、
7:00二股出発。車道歩きの苦手な人はズックで歩き始める。所々路面が凍っているが、やはり車道歩きはズックのほうが楽だ。しかし1時間弱歩いたところで除雪車が停まっていてアスファルトはおしまい。積雪が少なくても除雪はスケジュール通りにしかやらないようだ。仕方なくズックを岩陰にデポして猿倉へ。
天気はよく晴れていて、歩いているとかなり暑い。汗をかきながら漫然と歩いていたら猿倉台地を登りすぎてしまった。長走沢の向こうに白馬尻へと続く林道が遠く延びているのが見える。失敗した。あわてて方向転換。20分くらいは損をしたようだ。
林道が西へと回り込み始めると、やがて正面に主稜が見えてくる。白馬尻の手前で杓子尾根パーティと別れ、いよいよ主稜への登高開始。ところがなぜか先行パーティのトレースが白馬沢左岸の小尾根を経由して八峰へと続いている。何か理由があるのかと思いトレースを辿ってみたら、またもや大失敗。無用なアップダウンをしただけで、すごくがっかり。普通に大雪渓を渡って直接八峰に取り付いて何の問題もなかった。こんな遠回りをしてしまったせいか、程なくして小茂田さんの足が吊った。八峰への急登に入って、さらに足の状態は
悪化したようで急激にペースダウン。15:00、天候も崩れ雪も降り始めたため、八峰直下(2180m)でこれ以上は無理と判断。行動打ち切りとし、斜面を切り崩して幕営する。
18:00前の杓子尾根パーティとの交信では、2300m付近に幕営していて明日の天候が良ければ予定通り杓子岳へ向かうとのこと。一応こちらも予定通り先を目指すが、小茂田さんはここから下山。残り3人で山頂に向かう事になった。
4月8日(日) 晴れ時々曇り、午後から風雪
今日の行程は長くなりそうなため3:00起床。テントの撤収と不要な装備の荷下げは小茂田さんにお願いして5:00出発。やや風が強いものの天気はよさそうだ。六峰の登りとおぼしき場所で6:00前の交信。杓子尾根パーティも予定通
り頂上へ向かうとのこと。六峰からは山頂付近までが遠望でき五峰付近を2 パーティ(いずれも2人組)が先行しているのが見えた。雪質はまずまずの締まり具合だが、気温のためか若干沈み加減。また場所によっては降雪と風のためか深雪となる。しかしいずれにせよ先行パーティのトレースのおかげで、かなり安定して進めた。五峰から先のナイフリッジも特に
問題なく、楽しみながら慎重に登っていく。しかし途中からはガスに覆われ、
完全にホワイトアウト。「天気よ、これ以上悪くならないで」と祈りながら先を急ぐ。
三峰の雪壁は難なく越えたが、二峰の雪壁で先頭の2人パーティが手こずっているのか、かなり時間をかけて登っている。2番目の2人パーティと順番待ち。ロープを出すほどではないが雪が深くやや不安定なようだ。先頭のパーティが抜け、2番目のパーティが抜け、やっと3番目の我々の番。約20分の順番待ちであった。二峰を越えたところにでっかいクレバスが開いていて、その縁を辿っていくのがものすごく怖い。そしてそのすぐ上が最後の頂上直下の雪壁。先頭の2人パーティはすでに取り付いていており、我々は再び順番待ち。
しかし、その間に後続パーティが続々と(3人パーティと5人パーティ)やってくる。今朝猿倉を出て軽荷で上がってきたそうだ。天気が回復し晴れてきたので景色を眺めながらのんびり順番待ちをする。
頂上直下の雪壁は55mとか60mとか聞いていたが、実際には70mくらいのようだ。先頭パーティのリードが頂上へ抜け、2番目のパーティのフォローが登り始めようやく我々の番がきた。約40分の順番待ち。11:00を少し回った頃にスタート。壁の途中で一度ピッチを切るが、2番目の2人パーティがリードを
ビレイしているすぐ脇(山側を向いて左側)にバケツを掘る。しかし表面は締まっていた雪も中はサラサラの砂糖のような雪で、アンカーをいくら埋めてもあまり効いているようではない。それでもなんとかセットしてふと顔を上げた時、右側を雪煙をあげながら何かが落下していった。エ?ナニ?・・・人?。
2番目を登っていたパーティのリードが頂上雪庇直前で落ちたらしい。そして、何の抵抗もなくビレイヤーも吹っ飛んで2人もろとも白馬沢側へ激しく滑り落ちていった(11:25分頃)。「マジかよ」と思ったが見守る以外できることもなく、じっと目を凝らしていると2〜300m落ちた辺りで何とか止まった。
少ししてから1人は動き始めたが、もう1人は横たわったまま。しかし会話を交わしているようなので、どうやら無事のようだ。しばらく状況を見つめていたが、後続の5人パーティが携帯で県警に電話して「ヘリも呼んだ」、という
ことなので我々はこのまま行かせてもらうことにした。
しかしあの人達のもし右側に自分がいたら、完全に巻き込まれていただろうと思うとゾッとした。この雪質ではビレイに失敗する可能性は高い。しかし落ちたパーティは、どうやら中間支点を取っていなかったようだ。おまけにシングルアックスで登っていたようでもあるので、たぶん自信があったのだろう。
我々は自信はないし、目の前で吹っ飛ぶのを見てしまったので大いにビビって
慎重に行こうと心に決めた。菅野と黄さん2人いっぺんに引き上げるのはもちろんやめて1人ずつ。隣のバケツには岩が露出していたので黄さんにハーケン
を渡し(1本持ってきておいてよかった!)打ってもらう。菅野を上げるとハーケン1本あるということなので、それも打ってもらってかなり気分的には楽になった。頂上へ抜けるまで再び自分リードで登り、かなり堅く締まってきた雪面にしっかりスノーバーで中間をとる。雪庇の直下は堅い雪面の上にサラサラの雪が被っていて斜上しなければいけないだけに余計に緊張する。スリップして落ちていった跡も丁度ここだ。最後の雪庇の乗越しは先頭パーティが越えたもののまだ結構張り出しているので、がんばって削りに削る。頂上へ抜けると猛烈な西風。いつの間にか視界はなく雪も降り始めている。ヘリの音が何度も聞こえるがこれでは近づけまい。3人全員が頂上へ抜けたのが13:00過
ぎであった。
ホッとしたのも束の間、すでに歯の根が合わないほど寒い。大急ぎで登攀具を片づけ頂上で記念写真。何を隠そう山を始めて二十数年。私、白馬岳山頂初めてなんです。こういう人、珍しいでしょう?できればこんな天気じゃなければ、もっとよかったんですが。
下山は大雪渓をただひたすら下る。下るにつれ降雪がだんだん激しくなり足元の雪は緩んで時に膝下まで没する悪雪。辺りは真っ白で何もおもしろくないが、くたびれ果てながらもどんどん下っていくと頂上宿舎から1時間ほどのところで下山中の杓子尾根パーティに追いついた。場所は白馬尻の少し上で、
ちょうど15:00だったので交信の手間も省ける。ヘリが飛び回っていたのが気になっていたとのこと。ご心配かけました。杓子尾根パーティも予定の行動をこなせたということで充実の春合宿プレ登山でした。
白馬尻から二股まで予想外に時間がかかり、全員が二股へ下山したのが夕方
18:00。在京の鈴木さんに「白馬で事故発生」の情報が入っていて、「もしや」
と思わせてしまい大変申し訳ありませんでした。小茂田さんも長々と待たせてしまってすいません。長い一日でした。

Z峰にて朝日 |

Y峰付近 |

菅野さん |

X峰のナイフリッジ |

頂上直下 |